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満天の星 番外編 ~兄、大樹。家族の始め方~ SIDE  桃子

Author: 紅城真琴
last update Huling Na-update: 2025-07-27 07:03:56

本当にもう。

職場の人間の前でまで、ドクター面はやめて欲しい。

ただでさえこの前のことが気になっているのに。

ああ、今日が暇な日で良かった。

昨日から体調不良で寒気がするし、食べられないし、食べてないから余計にフラフラして。こんな日に大樹先生に絡まれて焦ったわ。

「あれ?多恵ちゃん彼氏できたの?」

「はい」

新人も先輩も楽しそうに休憩してる。

まあ、たまにはいいわよね。

こんな日だってないと。

「この前の人は?」

「もう、別れましたよ」

「えー、何で?かっこいいって言ってたじゃない」

「やっぱり同業者はダメです。色々見えてしまって」

「へー」

今日は随分盛り上がってるな。

フー、私も近くの椅子に腰を下ろした。

良かった、やっと休める。

そういえば、結衣はちゃんと学校に行ったかな?

今朝はどうしても起きられなかったから、「ママ、自分で食べるからいいよ」って言ってくれて助かった。

いつの間にか大きくなったのよね。

ん?

視線を感じて顔を上げると、同僚達がコソコソと私の方を見ている。

何ですか?と見返すと、視線を外しみんな散って行く。

はあー又だわ。本当に面倒くさいんだから。

「目が怖いぞ」

え?

大樹先生、いつの間に隣に来ていたんだろう。

「お前、鏡見たことある?」

「はあ?」

「体調が悪のに喧嘩売ってどうするんだよ」

「そんな」

つもりはないけれど。

愛想笑いをする気にならないだけ。

「はい」

差し出されたのは体温計。

え?何で今?

「杉本さん
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